桂枝茯苓丸と甲字湯を桂枝甘草湯から考察してみる

瘀血に用いる方剤の代表格として桂枝茯苓丸がある(一般的には25番)

 

子宮筋腫・月経困難症・多嚢胞性卵巣・卵巣嚢腫・更年期障害にともなう冷えのぼせ

 

  =瘀血

 

という方程式のような病名漢方を目にする機会があった(保険調剤薬局に勤めていた頃)

もちろん効く可能性があるのだから良いと思います

ただし、なぜ効くの?効かないの?はどの程度判断されているのでしょう??

試しに出してみようというものなのですか!?

パチンコ玉ですね(笑)

 

桂枝茯苓丸には下記5味が配合されています

 

 桂枝・茯苓・牡丹皮・桃仁・芍薬

無駄のないとてもスマートな配合

逆に言えば薬味が少なくポイントが瘀血に限定されている

そのため「血滞れば気亦滞る」「気は血の帥たり」と言って気血両者を流すための処方がうまれたのでしょう

 

・血腑逐瘀湯(その他逐瘀湯類)

・柴胡疎肝湯

・加味逍遥散合桂枝茯苓丸

など

突如として質・量ともに重たくなりました・・・

 

古来より中国は国土が広く油や火で加熱調理したものを食する文化がありました

生魚は運ぶ手段がなく腐ってしまうため食べません

そのため辛いもの・油ものを落とし込める丈夫な胃腸をもっています

ですから薬味が増えても問題なく飲むことができるのです

 

「♪日本人は胃腸が弱い」なんて歌があったような(笑)

 

日本にはさっぱりとしていて食材の風味を活かした食文化があります(e.g.出汁)

油もの・辛いものを受ける丈夫な胃腸を持ち合わせていません

すでに40代50代で梗塞を発症したり胃がん・大腸がんが増えていますが

濃い味・こってりを食べていることで将来卒中を患う方が増えるのは目に見えています

日本人には薬味の多い処方や胃腸に重たい生薬(上記ではジオウ・トウキ・ゴシツなど)が合わない傾向にあります

*もちろんすべての方ではありません重たい処方を飲める方もおります

 

また西洋薬は薬を減らしてください・出来るだけ飲みたくないとおっしゃるのに

「漢方なら安全」「漢方薬は副作用がない」という誤った認識がまだまだ多いようです

ご自身の漢方薬に配合された薬味を見てみると良いでしょう

または煎じ薬でつくってもらうと良いでしょう

薬味の多さ・色の濃さ・味の重たさにビックリされると思います

漢方薬の中には中国でつくられた処方があれば日本でつくられた処方もあります

日本でつくられた処方のひとつ

 

甲字湯(桂枝茯苓丸+甘草+生姜)

 

江戸時代の医人である原南陽が創製した

桂枝茯苓丸は血瘀を除くために非常にシャープに働きます

しかし同時に気の流れの滞りが往々にして起こることを実感・経験します

 

その時に単に「気の流れが良くなるお薬を一緒に出しますね」と

逍遙散(加味逍遥散)・香蘇散などを足して良いのでしょうか?

*血腑逐瘀湯は心血管疾患の胸痛が血瘀ととらえ血流改善を目的として気血を同時に流すために創製されたもの

 逐瘀湯類のなかでも少腹逐瘀湯は婦人科疾患にフォーカスした処方となっています

方剤1つ1つには顔があります

その方剤をつくられた方々の意志が込められているはずです

たった数十年しか漢方を勉強していない僕らが「簡単に足して」しまったら顔が消えてしまいます

先哲のロマンを蹴飛ばすようなことはしてはいけません

 

また脇道にそれました・・・

 

 

甲字湯は桂枝茯苓丸に桂枝甘草湯(傷寒論)の方意が加わったことになります

桂枝甘草湯には気の滞りをスムーズにしてくれる作用がある

 

・苓桂朮甘湯(67条)…気上衝胸

・苓桂甘棗湯(65条)…欲作奔豚

・茯苓甘草湯(356条)…心下悸

・桃核承気湯(106条)…其人如狂

・桂枝加桂湯(117条)…必発奔豚

・救逆湯(112条)…必惊狂、起臥不安

・桂枝甘草竜骨牡蠣湯(118条)…煩躁

 

上3剤はお水も関わっているが桂枝甘草湯により気の上衝を抑える

下4剤は気の流れの異常が要因として症状を発しているため桂枝甘草が配伍されている

金匱要略の桂枝茯苓丸・桂枝加竜骨牡蠣湯、そして甲字湯もすべて桂枝甘草湯の方意を持っていると考えて良い

 

また南陽は活血作用を強めたい場合には大黄を加えた方剤を用いています

 

つまり

・桂枝茯苓丸(瘀血)

・甲字湯(瘀血+気の流れの異常)

・甲字湯加大黄(強い瘀血+気の流れの異常)

という3剤で瘀血とその発展症状に対処できるのです

*桃核承気湯は桂枝甘草湯+承気湯類でもあるため甲字湯加大黄よりもさらに強力な活血剤

≪参考≫

 

桂枝茯苓丸

金匱要略・婦人妊娠病

「婦人宿(もと)癥瘕あり。経断ちて三月に及ばずして、漏下を得て止まず。胎動臍上にあるは癥痼妊娠を害すとなす。

六月にして動くは、前三月経水利するの時の胎なり。下血は後断えて、三月の衃なり。血止まざる所以は、その癥去らざる故なり。その癥を下すべし。桂枝茯苓丸之を主る。」

  

勿誤薬室方函口訣(浅田宗伯)

桂枝茯苓丸

「此の方は瘀血より来る癥瘕を去るが主意にして、凡(すべ)て瘀血より生ずる諸症に活用すべし。原南陽は甘草大黄を加えて腸癰を治すと云う・・・。

又此の方と桃核承気湯との別は桃承に如狂・少腹急結あり。此の方其の癥去らず故也を目的とす・・・。」

 

桂枝甘草湯

傷寒論・太陽病

「発汗過多、其の人手を叉(まじ)えて自ずから心を冒(おお)い、心下悸し、按を得んと欲するもの、桂枝甘草湯之を主る」

 

血腑逐瘀湯(医林改錯)

「胸中血府の血瘀の症を治するに血腑逐瘀湯を立てる」

柴胡疎肝湯(医学統旨)

「怒火にて肝を傷り、脇病むを治す」

逍遙散(和剤局方)

 「血虚虚労にて、五心煩熱し、肢体疼痛し、頭目昏重し、心忪し頬赤く、口乾き咽乾き、発熱盗汗し、食を減じ臥を嗜み、および血熱相搏ち、月水調わず、臍腹脹痛し、寒熱瘧の如きを治す。また室女血弱く陰虚し、営衛和せず、痰嗽潮熱し、肢体羸痩し、漸く骨蒸となるを療す。」