傷寒論を方剤書として読むと
熱入血室=小柴胡湯
となる
これは仲景(傷寒論)に対して失礼な振る舞いであったと反省した。。。
傷寒論144条
「婦人中風、七八日、続得寒熱、発作有時、経水適断者、此為熱入血室、其血必結、故使如瘧状、発作有時、小柴胡湯主之」
この条文の謂わんとすることは??
Q1;発作とは?2つの発作は同じものか?
Q2;熱入血室=小柴胡湯か?
大塚敬節
「婦人中風、経水適ま断ち、七八日、続きて寒熱を得云々」と字句を転倒して解するが良い。
血室を子宮と解する者が多いが、私は肝を血室にあてている。
奥田謙蔵
(143条にて)血室とは子宮に非ず。恐らくは血中、即ち汎く血管系統を指ざせるならむ。
(144条にて)月経が期に至って来潮せず。表邪血中に入り、而して血中に於て結ぼるるが為なり。
山田正珍
「前条143条・後条145条は太陽病中に経水が適ま来たる者を論じ、
此の条は月事中に病を得て未だ断つ可からざるに断つ者也。
其の因同じからざれども、其の熱血室に入るは則ち一なり。
悪寒発熱して瘧状の如き者は桂枝麻黄各半湯・桂枝二麻黄一湯等の証也。
寒熱往来して瘧状の如き者は小柴胡湯の証也。
瘧状の如き者発作時に有ると謂う也。此条及び下条は胸脇下満無き故期門を刺さざる也。」
正珍の論に賛成である。
つまり
A1;発作は同じではなく、
前半は少陽証の発作(96条往来寒熱)→小柴胡湯
後半は太陽証の発作(25条如瘧)→桂枝二麻黄一湯
A2;「熱血室に入る=小柴胡湯」の方程式はなく、熱血室に入り往来寒熱(少陽証)がある場合に小柴胡湯の適応となる
臨床においてこの状況を感じることがあったので紹介した
主訴:蕁麻疹
月経後期(40日~) 子宮頸癌のOPE歴あり
排卵期以降に面部に好発 赤色膨疹
温まったとき・飲酒時にも発症しやすい
来潮により症状が寛解する
ここで
144条の条文をもとに小柴胡湯加減を用いても十分な変化がなかった
「経水たまたま断つ」という部分を切り離して考えなければならないからだろう
小柴胡湯により血室の熱を冷ますのではなく
活血薬を用いて来潮を早め蕁麻疹を起こさせないようにしなければならなかった
106条
「~血自下、下者癒。」である
折衝飲を用いて月経周期を5週程度におさえることで蕁麻疹の発症が消失した
(甲字湯加大黄・腸癰湯は合わず効果不十分)
Q3;血室が子宮ではないという大塚・奥田の論は正しいのか?
A3;小柴胡湯を熱入血室にあてようとしたための解釈と思われるためのもの
血室=子宮(胞宮)であり熱入血室の病態に必ず小柴胡湯あたるわけではない
やはり表邪が進行してきたものに対して小柴胡湯がゆくのであろう