苓桂朮甘湯と苓姜朮甘湯
たった一味の違いなのに全く適応の異なる2剤
苓桂朮甘湯
傷寒論67条
「気上衝胸」「身為振振揺」などキーワード満載
桂枝甘草湯の方意をもちつつ、
桂枝去桂加茯苓白朮湯→苓桂朮甘湯→真武湯の「水の流れ」を汲む
金匱要略・痰飲咳嗽病
「心下有支飲、胸脇支満、目眩」
さらにその一つ前の「病痰飲者、當以温薬和之」
も臨床上重要である
苓姜朮甘湯
金匱要略・五臓風寒積聚病
「腎著之病」「病属下焦」
この条文の解釈、乾姜が加わることで病位が下焦におりる?など…
こちらは難解ダ(・へ・)
ここで視点を変えてみる
両剤に附子が加わったとしたら??
苓桂朮甘湯加附子:茯苓・桂枝・朮・甘草・附子
苓姜朮甘湯加附子:茯苓・乾姜・朮・甘草・附子
並び替えると
⇓
苓桂朮甘湯加附子 → 甘草・附子・朮・桂枝・茯苓 → 甘草附子湯加茯苓
苓姜朮甘湯加附子 → 甘草・乾姜・附子・朮・茯苓 → 四逆湯加茯苓・朮
*真武湯の加減法「若下痢者、去芍薬、加乾姜」としなかったのは
苓姜朮甘湯が下痢に用いる方剤ではなく甘草乾姜湯が重要と判断したため
2剤の顔がうっすらと見える気がしてきた
甘草附子湯
傷寒論175条
「風濕相搏、骨節煩疼、掣痛、不得屈伸、近之則痛劇、汗出短気、小便不利、悪風不欲去衣、或身微腫者、甘草附子湯主之」
陽の回復ではなく桂枝×附子による通絡止痛を目的とした方剤
四逆湯
少陰において陽を回復させるための方剤
金匱要略で「腎著之病」「病属下焦」と述べているように苓姜朮甘湯は病位が深く補うのが先
大きな違いはここにあるのだろう