黄連
キンポウゲ科のオウレンや同属植物の根をほとんど除いた根茎
神農本草経の上品に収載されており傷寒論・金匱要略にも記載
漢方薬を構成する上で非常に重要な植物・生薬
不眠・不安・動悸・パニック障害などの精神症状や飲酒過多による熱を冷ます働きもある
非常に苦味が強いがその苦味が薬効となる
処方例
・瀉心湯類(傷寒・金匱)
・黄連湯(傷寒論)
・黄連解毒湯(肘後備急方・葛洪撰)
・竹茹温胆湯(寿世保元:龔廷賢)
・清上防風湯(万病回春:龔廷賢)
・杏仁滑石湯(温病条辨:呉鞠通)
修治
①炒製…寒性を緩やかにする
②酒製…引薬上行(上焦の火を清する)
③姜製…胃熱を清したり、嘔吐を止める
④塩製…大腸や膀胱の積熱を清する
⑤呉茱萸製…げっぷや脇痛を治す
⑥醋製…肝胆の虚火を治す
⑦製炭…止血に用いる
*参考【漢方修治の実際】顔焜熒
【神農本草経】
黄連味苦寒主熱気目痛眥傷泣出明目腸澼腹痛下痢婦人陰中腫痛久服令人不忘一名王連
【本草綱目】
黄連治目及痢為要薬、古方治痢香連丸、用黄連、木香;姜連散、用乾姜、黄連;変通丸、用黄連、茱萸;姜黄散、用黄連、生姜;治消渇、用酒蒸黄連;治伏暑、用酒煮黄連;治下血、用黄連、大蒜;治肝火、用黄連、茱萸;治口瘡、用黄連、細辛、皆是一冷一熱、一陰一陽、寒因熱用、熱因寒用、主輔相佐、陰陽相済、最得制方之妙、所以有成功而無偏勝之害也。
【本草備要】
大苦大寒、入心瀉火。鎮肝涼血。燥湿開鬱。解渇。除煩。益肝胆、厚腸胃、消心瘀。止盗汗。治腸澼瀉痢。腹痛。心痛伏梁。目痛痞傷。癰疽瘡疥。酒毒胎毒。明目。定驚。止汗解毒、塗疳。殺蚘。寒虚為病者禁用。
出宣州者粗肥、出四川者瘦小、状類鷹爪、連珠者良、去毛治心火生用虚火醋炒肝胆火猪膽汁炒、上焦火酒炒。中焦火姜汁炒、下焦火鹹水或童便炒、食積火黄土炒、治湿熱在気分。呉茱萸湯炒在血分、乾漆水炒點眼赤、人乳浸。
黄芩竜骨為使悪菊花元参殭蚕白鮮皮、畏款冬牛膝、忌猪肉。殺烏頭巴豆毒。
【中薬学】人民衛生出版
〔別名〕川連 雅連 味連 鷄爪連
〔性味〕苦、寒
〔帰経〕帰心、肝、胃、大腸経
〔主治効能〕清熱燥湿 瀉火解毒
〔按語〕有”黄芩治上焦、黄連治中焦、黄柏治下焦”之説、意謂黄芩長於清肺熱、黄連長於清胃火、黄柏長於清腎火。
実則黄連対上焦心火、中焦胃火、下焦肝火清瀉之力均強、并不限於清胃火、謂三薬分治三焦、
是就三薬相比較其所治之長而言、并非説該薬只能清某一臓腑之熱、対其他臓腑即全無作用。
【薬徴】吉益東洞
心中の煩悸を主治するなり。旁ら心下病・吐下・腹中痛を治す。
夫れ黄連の苦は心煩を治するなり。是れ性の能たり。張仲景用ひて、心下痞・嘔吐・下利の証を治するなり。是れ性の枝して岐るるところなり。故に心煩の状なき者に、之を試むるに効なし。
【新古方薬囊】荒木性次
〔効用〕血の虚熱を去り虚熱より来たる諸証を治す皮膚の痒み又はタダレ心下の痞、下利出血、心煩、腹痛など
皆それより生ずる証候となす。
〔応用〕胸や腹の病ひ、又はそれより来たる発熱、心煩、下利、腹痛、又は皮膚の熱あるただれを治する用ひらる。
【実践寒薬学】三浦於菟
清熱薬(苦寒、心・肝・胃・大腸)
”治火の主薬”といわれ、清熱・燥湿・解毒各作用ともに優れた実熱瀉火の重要薬。特に心火除煩作用に優れる。
【中医臨床のための中薬学】神戸中医研
清熱薬
〔性味〕苦・寒
〔帰経〕心・脾・胃・肝・胆・大腸
〔効能と応用〕①清熱燥湿 ②清熱瀉火 ③清熱解毒