虚弱体質(!?)を目標に用いられることの多い建中湯類
小建中湯・黄耆建中湯・中建中湯・帰耆建中湯など
小建中湯・黄耆建中湯は小児のアレルギー体質を目標に処方されているようです
今回はこのことについて考察してみようと思います。
≪小児≫
①黄帝内経素問・上古天真論の有名な条文
「女子七歳腎気盛、歯更髪長。~
丈夫八歳腎気実、髪長歯更。~」
女性は7歳周期、男性は8歳周期にカラダが変化してゆくよ。といっている。
そしてピークは7×4=28歳±α、8×4=32歳±αであると。
つまり、小児期は成長期でありまだ陰陽ともに満ち足りていない。
②朱丹渓の言葉に
「小児は陽常に余りありて、陰常に不足す。」
がある。
丹渓は内因の発熱に対して相火妄動が大切であると考えた。身体は成り難く虧け易い。
気は常に余りあり血は常に不足す、天地と同じく陽は有余陰は不足の論を出したのである。
これらの意味するところを図で示すと下記のようになるだろう。
ここで小建中湯の処方構成を見てみると
小建中湯:芍薬6・桂枝4・大棗4・生姜1・甘草2・膠飴20
芍薬が桂枝に比べて多く配合されているのが特徴。
*膠飴(アメ)は現代の食餌状況ではあまり重要ではないと考えているが
甘味が薬の胃への負担を軽減させるのであれば必要か?
芍薬が陰血を益すことは芍薬甘草湯(傷寒論29条:其脚即伸)からも明白でその理論は建中湯にも通じる。
朱丹渓②の陰の不足に対して芍薬が多く配合されているのも納得がゆく。
では陽はどうか?
黄帝内経①のように陰陽共にピークに至らないならば陽も回復させる必要がある。
その働きが桂枝および乾姜甘草湯(傷寒論29条)にあると考える。
つまり建中湯は陰陽両虚(偏陰虚)に対応しうる方剤であることがわかる。
以上を図で示すと下のようになるだろう。
≪アレルギー≫
アレルギーに関しては見解が様々で治療方法も確実なものが提示されていないのが実情である。
ただし、はじめに書いたように小建中湯・黄耆建中湯などをアレルギー体質を目標に処方している事実がある。
何故か??
*処方しているのは西洋医であり以下の解釈は漢方の理論とは一定の距離をもっていることをご理解ください
アレルギー反応とは本来異物ではないもの
卵・乳・ソバ・花粉・動物の毛など
が粘膜に付着した際に起こる免疫の過剰な反応である。
陽:活動性・温熱性・発散性など
陰:非活動性・寒涼性・沈降性、滋潤性など
小児の陰陽両虚(偏陰虚)においては相対的に陽の活動が活発となるために過剰な免疫反応が起こりやすい状態にあるといえる。
自律神経失調(交感神経の高ぶり)という方もおられるでしょう。
活発に動き回る、暑がる、元気で声が大きい、カゼをひくと高熱を発する
・・・相対的に陽が多い
足がほてる、口がかわく、緊張感が強い、食べているのに太らない
・・・相対的に陰が少ない
陰陽の平衡を保ちつつピークへ持って行くことができればアレルギー反応を起こすことなく成長を遂げることが出来る。
これが建中湯類をアレルギーに対して処方している先生方の見解と考えている。
≪黄耆≫
小建中湯か黄耆建中湯か?
という議論は様々な問題を抱えている。
出典の金匱要略・血痺虚労編に還るならば「諸々の不足」に対して黄耆建中湯が適応となるが
いわゆる虚損に対する黄耆としては量があまりにも足りていない。
そこで中医学理論に基づいて考えると「肺は皮毛を主る」であり
黄耆は帰経を脾肺とし益気固表という効能をもつために外的要因(アレルゲン)に対する抵抗力がつく
という理論なのであろう。(e.g.玉屏風散)
*黄耆の効能は托瘡生肌・利水消腫などともいわれます

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小児の陰虚なのになぜ六味丸(小児薬証直訣)ではないのか?
というお話はいつか書きたいと思います。
そのうち
幼少期の一貫堂解毒体質(小児アレルギー)にもちいる柴胡清肝湯について考察してみたいと思います。
乳児・小児アレルギーは低年齢化が進み状態の酷い子もいる現状があります。
アトピーで赤みや痒みが強い場合に清熱を要するのか?という部分を含め建中湯との比較が出来ればと思います。
しばらくお待ちください…