「舌苔は口臭の原因だからブラッシングをしてとりましょう」
と歯科・口腔外科の先生がおっしゃいます
漢方をやっていると全く意味がないことがわかります
確かに舌苔の付く方は口臭が生じやすいです
しかし苔が臭いを発しているのではなく、苔を生じるご自身の体質が原因なのです
以前にも書きましたが漢方では舌の状態をチェックします
舌は見える内臓とも言われるようにカラダの情報を我々に教えてくれます
例えば昨日女子会で食べたアヒージョの油にビール・ワイン、そしてスイーツの脂肪…
これらは次の日になれば苔となって現れます
苔は一時的な場合が多々あるためその時だけでは判断を誤る場合もあります
舌は他の問診の「確認事項」として最後にチェックしています
*口臭を気にされる方は慢性的に苔がある場合が多いです
それに比べて舌自体の大きさ・厚み・色・潤い・溝…
などは一時的なものではありません
素体を判断する重要な項目となります
ところで先日いらした方に茯苓沢瀉湯を処方した例がありますのでご紹介いたします
主訴:口臭が気になる
40代女性
既往・服薬歴:特になし
20代より気になっており様々なものを試した。漢方薬もネットで調べて試してみた。
大学病院で唾液が少め(ドライマウス)であると言われた。
口乾(++) シェーグレン症候群(-)
時々口の苦みがある。口粘(-)
口唇が熱くカッカする感覚。唇が荒れやすい。
体臭・便臭は異常なし。
≪試した漢方薬とその反応≫
黄連解毒湯・半夏瀉心湯→はじめは良い感じがしたが口の乾きが改善しなかった。
麦門冬湯→変化なし
白虎加人参湯→乾きは潤うが舌苔が取れない
食欲正常 冷飲でお腹を壊す *漢方薬を飲んでから
睡眠良好
小便頻数 日中10行以上(1回量正常) 夜間1-2行 薄黄色
大便 1日1行 普通便
舌 淡紅・苔白厚・点刺
≪その他の所見≫
昼寝後の動悸が時々ある。むくみ(±)カラダの重だるい感覚(++)
病理:水飲偏在
方剤:茯苓沢瀉湯
*病理的な2次産物である水飲はカラダに様々な影響を現わします
めまい・耳鳴り・立ちくらみ・動悸・むくみ・吐き気・頭痛・だるさ・下痢・湿疹・喘息・・・
この方の場合は必要以上の水分がカラダに溜まったがために小便回数が増え舌苔厚、さらに動悸・重だるさとなっています
カラダには水飲が過剰にあるのにもかかわらず口乾があるため摂取すれば余計に溜まり
古くなったお水が口臭となってしまいます
茯苓沢瀉湯はお水の偏在を取り除く胃腸薬です
元は胃の働きの低下した嘔吐を治す薬です
血脈中の水分が増せば細胞が湿潤して口腔内を潤し口乾が解消されます
口乾が解消されれば過剰な水分摂取をすることもなく、古くなった水がなくなり口臭がとれるという仕組みです
*ちなみに冷飲でお腹を壊すようになったのは漢方薬(黄連解毒湯・半夏瀉心湯・白虎加人参湯)で胃が冷えてしまったためでしょう
出典
【金匱要略・嘔吐噦下利病】
胃反、吐而渇欲飲水者、茯苓沢瀉湯主之