黄帝内経素問・上古天真論
「女子七七任脉虚、太衝脉衰少、天癸竭、地道不通、故形壊而無子也」
女性は49歳前後になると月経に関わる機能が衰え子供が出来なくなる
有名な条文です
更年期障害は腎虚ありきとはここからくるのでしょうか
もしそうであれば、なぜ更年期障害は閉経前後のみに生じる『一時的な』病症なのでしょうか・・・
内経は「任脉虚、太衝脈衰少、天癸竭」といい
補っても衰え竭きるのは天命だと教えてくれています
性格と同じように病は十人十色
更年期障害後のフォローに腎虚を考えるのは理解できますが
年齢だけで腎虚の所見もないままにチャート式のような方剤選びはして欲しくないです
今回は更年期障害に伴うだるさの例をご紹介します
主訴:だるさ
50代女性
既往歴:卵管血腫(2年前に切除)
服薬歴:なし
2年ほど前よりだるさが気になりだした。
更年期に入ったためか急激に体重が増えた。
2-3年前5kg増+さらに1年前5kg増=10kg増
特に今年に入り仕事に出るようになってだるさが顕著になった。
むくみ(-) めまい(-) 動悸(-) のぼせ(-) 手足冷(-)
だるさに加えて昼夜を問わず眠い。
腹満(+) 腹鳴(++) お腹周りの冷え(+)
≪月経≫
毎月きていた頃は特別不調は感じていなかった。
現在は間隔があいて40~60日周期・経痛(-)・血塊(-)
食欲正常 口渇(-)
睡眠良好 *とにかく眠い
小便正常 大便1日1行 軟便
脈沈渋 舌淡紅・苔薄黄・歯痕
病理:血瘀水滞+血虚
方剤:折衝飲合平胃散(エキス)
14日服用中に1度生理がきた
だるさが半減し嗜眠も改善
腹満・腹鳴・軟便良好
Q:当帰芍薬散ではいけないのか?
血虚・水滞といえば当帰芍薬散がまず頭に浮かびます
飲んでいただかないとわかりませんがたぶん良いのでしょう
が血瘀への配慮が足りないと思いました
また、手足冷(血冷)がないため血虚の順位は血瘀・水滞の次であると考えました
折衝飲は当帰・芍薬が内包されているが瘀血に焦点をあてた方剤です
血瘀・水滞を流すことで流れれば新血が生じることもあります
Q:温経湯ではいけないのか?
更年期の種々の症状に温経湯が効果があります。
しかし温経湯の主治はあくまで血虚であり、血瘀の色が薄くなります。
先人も牡丹皮一味であると言っています。
腫塊の有無については判断を迷う部分ではありますが卵管血腫とそのOPE歴、月経が毎月あった頃には不調が無かったことを鑑みて選択しました。