胃が重たい 温経湯

以前温経湯をご紹介したのは「手のしびれ」でした

 

手のしびれ 温経湯

 

今回は「胃が重たい」とおっしゃる方の著効例をご紹介します

 

主訴:胃が重たい

 50代 女性

 服薬歴:ナウゼリン・プリンペラン・ハイゼット・デパス

 

更年期を迎え月経の頻度が減ってきた。昨年3ヵ月に1度。今年に入り1度あったきり。

のぼせではないが、顔が急にポーッと赤くなる感覚がある。発汗(-)

今年に入り胃が重たい感じがしてきた。食後に起こりやすい。

痛み(-) 吐き気(-) ゲップ(-)

消化器科を受診し検査を受けるも異常なく「自律神経のバランスが乱れているのでしょう」とのこと。

上記処方を受ける。

服薬により胃の状態は落ち着くが便秘になってしまった。

2-3日に1行 腹満感(+) 兎糞状(コロコロ便)

このまま服薬を続けていくのか不安になり漢方相談にいらっしゃった。

 

食欲正常 口乾・ちょこちょこ潤したい

     ワインが好きだが美味しく感じなくなってしまった

睡眠良好

小便短 大便2-3日に1行・兎糞状

舌淡紅・苔薄黄・乾

 

 

病理:血虚陰虚+胃虚

方剤:温経湯

 

1週間後に微量の月経様出血あり

 *血の流れが改善されたためのもので異常はない

胃の具合・便通共に良好

ワインも美味しく飲めている


【出典・金匱要略/婦人雑病】

「問曰:婦人年五十所、病下利数十日不止、暮即発熱、少腹裏急、腹満、手掌煩熱、唇口乾燥、何也?」

「師曰:此病属帯下。何以故?曾経半産、瘀血在少腹不去。何以知之?其證唇口乾燥、故知之。當以温経湯主之。」

 

【後世】

医方発揮

「”血気者、喜温而悪寒、寒則泣不能流、温則消而去之”≪素問・調経論≫。当以温経散寒与養血袪瘀併用、使血得温則行、血行則瘀阻自消。」

 

医宗金鑑

「下利は下血の誤りであり、婦人も五十位になると任脉が虚し衝脉衰えて月経が止まるようになるがそれにも拘らず下血する。・・・」

 

浅田宗伯:勿誤薬室方函口訣

「此方は胞門虚寒と云が目的にて凡そ婦人血室虚弱にして月水調わず、腰冷え、腹痛み、頭疼き、下血など種々の虚寒の候ある者に用ゆ。年五十云々に拘るべからず。反って方後の主治に據るべし。又下血の証、唇口乾燥、手掌煩熱、上熱下寒、腹塊なき者を適証として用ゆ。若し癥瘕あり・・・。」

 

龍野一雄:漢方医学大系

「瘀血性のもので下焦の虚寒によつ仮熱を生じ手足煩熱や口唇乾燥を起す。下利発熱半産等は有ってもなくてもよい。年五十とは限らず十代の人でも差支えない。」

 

大塚敬節:漢方治療の実際

「この方は進行性指掌角皮症によくきく。・・・手の指や手の甲などにできて、中々治らない頑固な湿疹に、この方が著効のあることを知った。」

 

寺師睦宗:椿庭経方辨

「按ずるに、此の方”瘀血、少腹にあり”と云うと雖も、必ず抵当・承気の堅塊有るが如きには非ず。蓋し乾血少腹に凝固してて、津液滋養する能はず、故に滋陰潤燥の品を用ふれば、則ち乾なる者は潤し、結する者は解するのみ。故に方中に多く滋潤の品を用ふ。而して瘀を破るは則ち牡丹皮一味なり。~乃ち一方中に温経、通経、調経、養血、滋陰の数義を兼ぬるを知れり。」