茯苓杏仁甘草湯と橘枳姜湯/金匱・胸痺心痛短気病

胸痺心痛短気病編に出てくる方剤はどうも使う機会が多くありません。

枳実薤白桂枝湯や栝蔞薤白白酒湯・栝蔞薤白半夏湯はおそらく狭心症の痛み。桂枝生姜枳実湯も心臓が原因の痛みでしょうし。。

茯苓杏仁甘草湯も含めてこれらの処方は大した薬物を使っていないのに循環器・呼吸器系の発作・痛みに効くわけですから漢方薬とは不思議なものです。

今回は茯苓杏仁甘草湯と橘枳姜湯について考えてみました。


「胸痹、胸中気塞、短気、茯苓杏仁甘草湯主之;橘枳姜湯亦主之。」

胸痹にて胸中に気塞がり、短気のものには茯苓杏仁甘草湯之を主る;橘皮枳実生姜湯もまた之を主る。

 

2つ並べて同じ適応があるように書いていますが実は違います。

a)茯苓杏仁甘草湯は循環器

b)橘皮枳実生姜湯は呼吸器

と私は区別しています。

そして初めにも書いた通りこの2剤は(これだけで)使うことはあまりありません。

しかしある処方の基となっていると考えると実はよく使っていることに気づきます。

 

a)茯苓杏仁甘草湯 → 苓甘姜味辛夏仁湯(痰飲咳嗽病)

b)橘皮枳実生姜湯 → 茯苓飲(痰飲咳嗽病)

 

どちらも痰飲咳嗽病編に登場する処方ですがその用途は異なります。

 

a)一般に苓甘姜味辛夏仁湯は喘欬(喘息)に用いますが、ツムラの適応症を見てみると「気管支炎、気管支喘息、心臓衰弱、腎臓病」という記載があります。この心臓衰弱(腎臓病も?)は茯苓杏仁甘草湯からきていると推測されます。

また部位として”心臓の辺り”に症状がある場合には茯苓・杏仁を用いることも考察されます。

ex1)四逆湯→茯苓四逆湯は六経においての最期の方剤ですがこの茯苓は厥陰という”心臓の辺り”に効かせることを目的としている

ex2)桂枝加厚朴杏仁湯は喘に用いる基本方剤ですがこの杏仁は喘という”心臓の辺り”で起こる症状に効かせることを目的としている

 

b)一方で茯苓飲は溜飲(吐き気や胸やけ)に用います。こちらには杏仁が含まれておりませんが部位としてはやはり”心臓の辺り”でしょう。この違いはおそらく循環器系と消化器系です。茯苓飲は消化器の症状に用います。橘皮・枳実・生姜ともに消化器に働きいわゆる溜飲を降ろします。痛みよりは不快感があるものが適応となります。

 

以上のように考えると茯苓杏仁甘草湯と橘皮枳実生姜湯はともに”心臓の辺り”に効かせる基本方剤であり、それぞれ循環器系・消化器系に用いることがわかると思います。

【参考】

苓甘姜味辛夏仁湯

水去嘔止、其人形腫者、加杏仁主之。其證應内麻黄、以其人遂痹、故不内之。若逆̪而内之者、必厥、所以然者、以其人血虚、麻黄發其陽故也。

 

《外台》茯苓飲

治心胸中有停痰宿水、自吐出水後、心胸間虚、気滿、不能食、消痰気、令能食。