関節リウマチの相談は避けていました…

2003年に生物学的製剤の投与が開始されて15年。リウマチの治療は大きく様変わりしました。

重度でなくとも早期に罹患が判明した場合に生物学的製剤を用いることで関節の変形を防ぎ痛みのコントロールが良好であることがわかっています。それ以前の治療方法(リウマトレックスや抗リウマチ薬によるもの)では症状の改善が十分でなかったり副作用の面が指摘されることが多く漢方相談に訪れる方がありましたが近年はそれほど多くありません。

 

上記の理由から私は開業以来リウマチの相談をあまり積極的に受けてきませんでした。つまり生物学的製剤を用いている患者さんの状態に勝るほどの効果が漢方薬にはないと思っているからです。この点に関しては今も考えは変わりありません。ただし金銭面や抗体医薬を用いる不安・また自己注射の身体的負担から使用を避ける方もおられます。そのような方のセカンドオピニオンとして漢方が利用できる価値はあると思います。そこで今回はリウマチを診てきた私なりの考えを書こうと思います。

 

周知のように性差が明らかな疾患であり女性>男性です。そして約30%に併発症状として”渇き”があります。シェーグレン症候群と診断されるケースも少なくありません。そして相談を受けてみてほぼ全ての方に月経異常がみられます。*西洋薬の影響よりも発症以前から月経異常がある傾向にあります

 

以上の観点から私は温経湯をベースに治療をしています。この処方の特徴である月経異常と渇きが揃っているからです。リウマチは急性転化が怖い疾患ですのでむやみやたらと温経湯を用いて温めると酷い目に合う可能性があるので注意が必要です

 

ところがこの処方はそのまま用いても期待するほど効果がでなかったりします。創製した仲景の処方の意図が理解不能なのです…処方名の「温経湯:ウンケイトウ」は女性にとても効きそうです。産婦人科で基礎体温を整えるなどの目的で処方されているケースを目にしますがちょっと強引です。

 

今回のようにリウマチで関節の痛みを訴えるようなケースでは通絡止痛を高めるために牛膝・延胡索・紅花といった薬物を加えます。→折衝飲に近くなります。

傷寒論(温経湯の出典)には「帯下や半産」の記載があるけれどそうではない場合には阿膠を抜きます。呉茱萸は味が大丈夫でない限り入れません。

 

このようにその方の病態に合わせて処方を組み立てていくとリウマチのコントロールができるようになりました。

そして大抵の場合お肌の質感が良くなっていくのを感じるようです。

 


50代女性

主訴:慢性関節リウマチ

 

あちこちの関節にこわばり違和感があるが右手首・左膝が最も痛みが強い。ペットボトルの蓋を開けるのも痛い日がある。腫れ(++)カラダは冷えているが、気温が低い日に痛みが強くなる印象はない。足の腫れは変化するためサイズの大きな靴を履いている。

悪化要因…使いすぎ。日によっては軽いものも痛くて持てない時がある。

緩解要因…休ませること。

舌紫・乾 裂紋(+) 舌下怒張(++) 口乾(++)多飲

 

【月経】

1年半前に閉経。20代はボルタレン坐剤でなければ痛みが治まらなかった。

卵巣嚢腫ope(30代)→癒着してイレウス

【服薬歴】

MTX8mg ケアレム 睡眠導入剤

 

温経湯加減


≪治療を経験してみて思うこと≫

 

痛みがあるから瘀血がある。そんな単純な方程式があればよいのですがそうもいかず…

リウマチの治療に関してはやはり”婦人科疾患”であると捉えたほうが成績が良いです。

またその瘀血に関して私は”深さの違い”と考えています。坐骨神経痛や脊柱管狭窄症といった痛みは病位が”筋”でありリウマチと比較すると浅いです。それに対してリウマチの病位は”経絡”つまり筋のさらに奥です。

 

①筋の痛みは舒筋する…当帰・芍薬・朮・鶏血藤

②経絡の痛みは通絡する…牛膝・延胡索・紅花

 

といった具合です。リウマチではなく更年期障害でカラダの痛みが出るようなケースに五積散が効くのは①の範疇だからだと思っています。他の治療を適当に済ませているつもりはありませんが、リウマチは安易に手を出して良い病気ではないと思っています。漢方にできることできないことをしっかりと見極めた上で引き続き治療に臨んでいきたいと思います。