開腹術後やイレウスに頻用される大建中湯ですがむやみやたらと連用されているように感じます。開腹時に外界に晒されることで腸が冷える→イレウス(腸蠕動停止)が起きる→痛みが生じる→大建中湯で温める腸蠕動が正常に働くということだと思います。データとして退院までの時間が短縮されるようなのでそういった使い方も有りだと思います。
さて漢方薬には建中湯類と呼ばれる仲間があり大建中湯もそこに含まれます。
- 小建中湯・・・・陰陽両虚偏陰虚
- 大建中湯・・・・腹腔寒邪侵襲による腹痛
- 黄耆建中湯・・・黄汗の病
- 当帰建中湯・・・産後腹痛
- 帰耆建中湯・・・肉芽形成促進(華岡青洲)
帰耆建中湯は皮膚病の後期に皮膚の凹凸をキレイに再生てあげるために使われます。それ以外は傷寒金匱に収載されています。それぞれの一例を挙げると
- 小建中湯は未発達な小児の成長を促す目的で小児の様々な症状に
- 大建中湯は腸が冷えてムクムクと動き腹満感に悩まされ痛みを現すものに
- 黄耆建中湯は皮膚が弱く汗孔の締まりが悪く汗を沢山かくアトピー性皮膚炎に
- 当帰建中湯は婦人産後病に収載されていますが、妊娠前の女性でも素体虚弱な体質に加え冷えが強く下腹の刺痛・絞痛が辛い方に
このように使われます。
これら建中湯類に1つ加えて欲しい処方が中建中湯です
- 中建中湯=大建中湯合桂枝加芍薬湯(小建中湯)
2剤の合わせ技なのですが目標は大建中湯寄りになります。
初めにも書いた通り大建中湯は一般的に腸閉塞やイレウスに用いられるのですが、むやみやたらと連用しているきらいがあります。医師・患者ともに服薬目的が曖昧で1回2包と量も多いため余らせている患者さんも少なくありません。腸閉塞やイレウスの発作期に大建中湯を服用するのはOKです効果があります。同様に回復術後に温めてイレウス(腸管麻痺)を予防することも有効です。しかし退院後にそのまま連用しているのが問題です。
そこで登場するのが中建中湯です。
桂枝加芍薬湯は内包する芍薬甘草湯の働きによって筋の過緊張を緩めます。筋がギューッと縮むと硬くなるのはわかると思いますがそれを緩めることよって腸閉塞・イレウスの発作を予防します。併行して大建中湯で腸管を温めることで発作を予防します。
万が一発作が起これば大建中湯のみもしくは大建中湯を増量すれば良いだけです。
このように考えていますから私は
- 中建中湯=大建中湯合桂枝加芍薬湯
が正しいと思います。
ちなみに膠飴は一生懸命混ぜてもなかなか溶けません。熱々のうちにカップに落とししばらく放置した方が溶かしやすいです。