下肢の痛みとむくみ・しびれ 苓姜朮甘湯

痛みやしびれ・むくみといった症状のご相談は多いです

漢方の活躍できる領域のひとつだとおもいます

今回は苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)1日分で痛みしびれが1/3になった事例のご紹介です

 

*この処方は冷たいお水があり冷気があたる環境が発症要因となります


【主訴】下肢の痛みとむくみ・しびれ

60代 女性

身長156cm 体重64kg

飲食店勤務

既往歴:脊柱管狭窄症

初来局2019.1.30

 

ひざに痛みがあり整形外科で診てもらっているが治らない。数年前起床時に膝が曲がらなくなり救急車で運ばれ診てもらった。整形では異常なし。循環器科へ回され検査した結果血栓が原因とされ抗血栓薬を処方され飲んでいる。左足の弁が弱く血流が悪い。下肢静脈瘤(++)

夏は全く平気で動けていたがこの2か月は痛みとそれに伴うむくみ・しびれが下肢に出ている(左>右)ひざ下は鉛の様に重たくて引きずる様に歩くこともある。仕事はデパート内の日本料理店でのホールスタッフで着物を着ている。夏は多汗で冬場も汗はかく。店内には生け簀があり扉が開くと冷気が入ってきて寒い。土日・祝日は大忙し。入浴すると症状も楽だか帰宅が日付をまたぐこともありゆっくりお湯に浸かれない。パーソナルトレーナーからは水分を摂りすぎるなと言われるが、医師からは血栓予防に水分摂取をこまめにするよう指導があり混乱している。

 

食欲正常 睡眠は短いがぐっすり寝ている

二便正常 脈渋 舌紫・苔薄黄


この方は脊柱管狭窄症を患っておりそこからくる痛みも考えました。

しかし今回のご相談は

「夏に全く平気で動けていた&この2か月(11月末~)に症状が悪化」

「生け簀&着物を着て冷気を受けている」

という2つのポイントに着目しました。

苓姜朮甘湯

金匱要略の五臓風寒積聚病に出てくる条文の内容は以下のよう

  1. 其の人身體重く、腰中冷え、水中に坐するが如し
  2. 身を労すれば汗出でて、衣の裏冷え湿る
  3. 腰以下冷え痛み、腰重きこと五千銭を帯びるが如し

これを今回の患者さんに当てはめてみる

  1. 着物を着て仕事をしており冷気が入ってくると寒い
  2. 夏は多汗で冬場も汗はかく
  3. ひざ下は鉛の様に重たく引きずる様に歩くこともある

苓姜朮甘湯は甘草乾姜湯のなかまです。

肺中冷・・・小青龍湯

胃中虚冷・・人参湯

病属下焦・・苓姜朮甘湯

 

小青龍湯や人参湯は臓腑を温めるのに対し苓姜朮甘湯は目的が異なります。

使っていても臓腑に働いている感覚は受けません。この処方の苓・朮は腰から下の水を動かします。

今回の患者さんは「味は甘く感じる」と仰り、乾姜が3g入っていても辛みを気にせず飲める点も処方が合っている根拠として重要です。合っていない人は辛くて飲めません。

 

この方の場合「生け簀」という湿邪を感受する環境に加えて扉が開く度に受ける冷気が合わさって発症したものと判断して苓姜朮甘湯を用いました。もし今回の痛みが脊柱管狭窄症によるものだったとすると冬に悪化することがあるにしても夏全く問題なかったという状況は考えにくいのです。


参考

【金匱要略・五臓風寒積聚病】

「腎着之病、其人身體重、腰中冷、如坐水中、形如水状。反不渇、小便自利、飲食如故。病属下焦。身労汗出衣裏冷湿。久久得之、腰以下冷痛、腰重如帯五千銭、甘姜苓朮湯主之。」