逍遙散:柴胡・当帰・芍薬・茯苓・朮・甘草・乾生姜・(薄荷)
私がよく使う処方のひとつです。
少し前のブログで更年期のホットフラッシュについて書きました。
血熱ホットフラッシュに用いているのは加味逍遙散です。
逍遙散と加味逍遙散とは似て非なるものだと思っています。
構成は上記8味
薄荷は理気を目的として入れているならば必要ないと思っています。
他の薬草と合わせて煎じたとき”香り”や”味”が良くなる場合には入れてもらいますが
薄荷が好きという方でも入れてみるとやっぱり無いほうが飲みやすいとおっしゃいます。
『理気を目的として入れるならば』
実はここに疑問を持っています。
逍遙散の一般的な解釈として「疏肝理気」と記載されたテキストが多々見受けられます。
*疏肝理気…気の流れをコントロールする肝の働きを高め気の巡りを良くする
この働き本当なのでしょうか…
患者さんを通して得る手ごたえとしては、逍遙散は卵巣に働きかける薬です。
なぜ卵巣(胞宮)に働きかけることが出来るのかというと
柴胡が半表半裏(表でも裏でもない部分)に薬物をもっていくと考えているからです。
半表半裏を解剖学的な位置づけで捉えた場合に代表されるのが肝胆です。
肝胆とは消化管(構造上外界と接している部分)と内臓との狭間の部分。つまり浅くも深くもない部分。
これと同じ位置関係にあるのが卵巣なのです。
子宮は言わずもがな外界と接しています。そのため腸と同様に様々な常在菌が存在しています。
卵管を通って進んだ先に卵巣があり血管を通じて内臓との狭間にあるわけです。
こういった解剖学的な位置(半表半裏)に存在している部位に働きかけたいとき柴胡が必要となります。
私は逍遙散(柴胡)で当帰・芍薬の働きを卵巣に持っていきたいのです。
当帰・芍薬の補助役として香附子or川芎が必要なことはあります。
*頭痛を併発している方に加えることが多いです
*理気ではなく血の巡りを良くします
そして逍遙散が合う方は往々にして便秘・下痢などお通じが安定しません。そこをフォローしているのが朮・茯苓・甘草・生姜となります。逍遙散を飲むと普段の便秘の改善や月経前の便秘↔月経開始後の下痢が落ち着きます。
この理論を元に逍遙散を使うととっっっっても良く効きます!
お薬をお渡しした時点で手ごたえを感じることもあるくらいです。
おまけになりますが
私は肺にも同様のことがあてはまると推測しています
外界↔気管↔肺↔肺胞↔血管
どの位置に柴胡が行くのか?詳細はまだわかりません。
今回の新型肺炎のように呼吸器の病態が進行した際に用いる方剤に柴胡が含まれるのはそういうことだと思っています。